真希波、お前はテリーなのか?「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」

先週、やっと「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」を見てまいりました。
今話題の細田守監督の「サマーウォーズ」ではなく、エヴァンゲリオンの劇場版の2作目の方です。

ネタバレ全開で行きますのでよろしくお願いします。

この新劇場版エヴァはご存知の方も多いと思いますがTV版とはストーリーが似ていてまったく異なる展開となっております。「エヴァンゲリオン、2週目はじめました」というのがこの作品にはもっともしっくり来るコピーではないでしょうか。今回の破はTVシリーズで言えばアスカの登場から、エヴァの咆哮&4本脚歩行で有名な第19話あたりまでがカバーされています。

その2週目の2番目の作品「破」、いきなり登場するのが真希波・マリ・イラストリアス、新たなるエヴァンゲリオンの操縦者です。
見た目は上のCUTの表紙のような風貌なんですが、眼鏡っ子で肉食系ちょっと異質なキャラです。
いきなり冒頭で使徒との戦いでユーロの持つ多脚式エヴァ5号機を吹っ飛ばしてしまった真希波の言うセリフが

自分の目的に大人を巻き込むのは、気後れするな…
さようならエヴァ五号機、お役目ご苦労さん。

目的って何?大人を巻き込むってどういうこと?と何かをやってくれそうな予感たっぷりの登場シーンです。

全体の大雑把な感想から書きます。今回の新劇場版:破はメッセージ色が非常に強いと感じました。ブルーハーツに例えるなら10年前のTV版は甲本ヒロトの書く感覚的な歌詞、今回の新劇場版は真島昌利の書く筋道の通ったメッセージソングというくらいの違いがあると感じました。

冒頭、真希波は「365歩のマーチ」を歌います。

幸せは歩いてこない
だから歩いてゆくんだね

宮崎駿以上に強いメッセージ性だと代打は感じました。

エヴァンゲリオン新劇場版:破」の印象は代打としては最初の50分くらい(アスカが「私一人じゃ倒せなかった」と落ち込むところくらいまで)が葛城ミサトの物語だと思っています。葛城ミサトはアスカに説教をします、3人で力をあわせなければ使徒を倒せない、あんたがどれだけ優秀でも無理、と。チームプレイの必要性を説きます。自分だけが優秀であれば問題ないとアスカは反論します。しかし葛城ミサトはそれを認めません。問題はそれだけではありません。上司でありこの機関の最高責任者である碇ゲンドウと連絡が取れなくなると、葛城ミサトは自分がこの場の最終決断者であると宣言をします。赤木リツコ博士の「成功率低いからこの作戦無理、技術スタッフとしてOK出せない」という反対意見も自分がこの場の最高責任者であるからと押しのけます。なんとかチームプレイで使徒の殲滅した後、無事が確認された碇ゲンドウ葛城ミサトに「よくやった」と声をかけます。庵野秀明はマネジメントだかリーダーシップの本でも読んだんでしょうか。ビジネス書であるならばマネジメントまたはリーダーシップの成功例として紹介されてもおかしくないケースに仕上がっています。

話の後半、ビジネス書的展開から少年漫画に切り替わります。週刊少年ジャンプというよりはマジンガーZでしょうか。綾波はお人形さんであることをやめようとします。アスカは唐突に死亡フラグを奏でます。碇シンジは感情を爆発させます。「もう笑うことはない」と宣言します。

ところで話は変わりますがテリーってご存知ですか?子犬を助けるために新幹線を手で受け止め、キン肉マンの相方で、キン肉マングレートというハワイ出身の超人に変装しても何故かテキサスコンドルキックを繰り出し相手にダメージをキン肉マンからも「さすがグレート技が多彩だ」と褒め称えらている正義超人のことです。違います。それはテリーマンです。代打が言いたかったのはドラゴンクエスト6に出てきた「さすらいの剣士」テリーです。主人公達が冒険を進めていくと、とても強い剣士としてテリーの影が物語りにちらついてくるんですね。テリー=すごく強い奴だけど味方には仲間になるのに時間がかかる、といったイメージだったと思います。テリーが仲間になるのはかなり後の方だったと思います。そして念願かなってテリーが味方になると…。主人公とのレベルの関係なのか、他のキャラへの愛着の問題なのか、理由はよくわかりませんが、あんまり強くないんですよね。皆さんもテリーはずっと馬車の中にいたと思います。そんなわけでテリーはドラクエ史上最大の期待外れキャラではないかと思っています。

真希波・マリ・イラストリアスとはいったい何だったんでしょうか?

真希波はシンジの匂いをかいだかと思うと「君、いい匂いがする、LCLの香り」とつぶやきます。アスカの2号機の乗れば乗ったで、「いい匂い…他人のにおいのするエヴァも悪くない」と言います。そうかと思えば、使徒ゼルエル)との戦いで「このままじゃ勝てないな」と客観的に分析すると、「モード反転、裏コード、ザ・ビースト!」と今までに見たこともないエヴァンゲリオンの設定を発動させます。「ザ・ビースト」ですよ。この真希波という人は何者なんですか。

でもそんな真希波もあっさりゼルエルにあっさりやられちゃうんですね。さらに綾波レイゼルエルに取り込まれます。

真希波は「もうエヴァには乗らない」といじけているシンジに逃げたほうがいいよ、それにいじけていても何も楽しくないとメッセージを伝えます。

碇シンジは真希波から何かを受け取ったのでしょうか。

「僕はエヴァンゲリオン初号機のパイロット、碇シンジです!」

ここから碇シンジは変わります。2週目の碇シンジは違います。少年漫画の主人公のように綾波に手を伸ばします。碇シンジは絶対に綾波レイを諦めません。幸せは歩いてこない、だから歩いていくんだね。碇シンジ綾波を抱きしめます。

真希波はつぶやくんですね。「やっぱ匂いが違うからかなぁ」真希波とはいったい何者なんでしょうか。もう一度問いかけます。思わせぶりに登場したわりにはとてもアレです。このとき代打には真希波とテリーがとてもかぶって見えました。

そこへすかさず渚カヲル君登場。

そして宇多田ヒカル

もういったい何がどうなったのか?そして次回作では真希波の活躍はあるのか?それともテリーなのか?そもそも真希波の目的とは何なのか?

次回「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」をお楽しみに…。

実は一番印象的だったのがエンディングの後の次回予告の前の「総監督 庵野秀明」のクレジットでした。そうか庵野秀明は総監督になったんだ、そう思うと、わかりやすい部分もあって10年前のTVシリーズはどこかのゲリラ部隊の作ったゲリラ的作品で、今回の新劇場版は正規軍の作った王道路線エンタティメントだと感じました。10年前よりも不自由にはなったけれども、強く、強度の増した物語、それがエヴァンゲリオン新劇場版:破。代打にとっては今回のエヴァンゲリオン碇シンジでもなく葛城ミサトでもなく庵野秀明の成長物語だと感じました。おしまい。